司馬 遼太郎『北のまほろば―街道をゆく〈41〉』 [エッセイ]
『街道をゆく』シリーズもついに41巻まで読み進みました。
倭は国のまほろば
日本に稲作農業が広がった5,6世紀
望郷の念を持って大和のことをそう呼んだ。
伝説では日本武尊が呼んだことになっている。
だが、稲作が伝来する前、縄文時代にはまほろばと言うべき場所はどこであったか。
それは青森県、特に津軽地方こそがまほろまであったのではないか。
と、実に興味深い視点でこの紀行は始まります。
稲作が中心になっている今の視点・現在の史観から見ればやや違和感を覚えることではありますが、
稲作が始まる前の狩猟採集生活では、海の幸・山の幸に恵まれた場所こそがまほろばと呼ぶに相応しい。
そう考えると、冬の寒い時期でも豊富な食料に恵まれた地はとても住みやすかったに違いありません。
弥生時代以降を正史として学んだ我々にとっては目からウロコが落ちるような視点で
「北のまほろば」を見つめたこの紀行はシリーズの中でも白眉といえる作品。
日本人観がひっくり返るような内容です。
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